アロマテラピーの歴史、それは古代から受け継いだ知恵

こんにちは、みましたといいます。

この記事ではアロマテラピーが誕生した現代から遡り、アロマテラピーの原点である植物と香りが関わってきた歴史を解説します。

古代の人たちの植物の活用の知恵 紀元前3500年~

古代メソポタミア文明 神との交信

メソポタミア文明は、紀元前3500年頃、現在のイラクの辺りでうまれた世界最古の文明です。

資材の確保のため、周辺の文明と交易は盛んに行われ、肥沃な土地、高度の農業技術もあり、文明も発展していくことなります。

そんな時代、神事に欠かせないのが『香り』でした。神殿で香を焚くことが、当時の人々は神と近づく手段と考えられていたわけです。

フランキンセンス(乳香)

香水や香りを意味する「Perfume」はラテン語で「Per」(通して)、「Fume」(煙)を合わせたものが元となっています。香りとは香を焚くことが始まりだったのがわかります。

古代エジプト

紀元前3000年頃、エジプト文明では樹脂を焚いて薫香として神殿で行う様々な儀式で使っていました。

亡くなった人の魂が戻ったときに使われるとされるミイラを作る時の防腐剤に使われていました。

防腐剤として使われたのは、フランキンセンス、ミルラ、シダーウッドなどです。

紀元前1000年頃には、香りももっと一般に使われるようになり皮膚を守るために軟膏として使ったり、油脂吸着法で作られた香油を身にまとう使われ方も生まれました。

これまで貴重だった香料は王族や聖職者しか扱えませんでしたが、ようやく一般の民にも広まるようになりました。

古代ギリシア~古代ローマ時代 医療、哲学への広がり

エジプトからギリシアに香油が伝わり、香料の使用が盛んになり、薬剤や化粧品にも使われるようになりました。

また、医学者ヒポクラテスは芳香植物を焚いて燻蒸することを医療法に使いました。哲学者のテオフラストスは著書の『植物誌』にて香料についても記しています。

ローマ帝国の皇帝ネロは、ローズがとても好きだった事から、ローズの香料を身体に塗らせたり、帝国が指示するとローズが降りてくるようにしていました。部屋の中が常にローズの香りで満たされていたと言われています。

皇帝ネロの軍医であるディオスコリデスが著した『マテリア・メディカ(薬物誌)』では植物の効能、薬の調合方法などが記されていて、重要な古典として使われていくことになります。

古代ローマ時代に建設された公衆浴場(テルマエ)の代表でもある「カラカラ浴場」では香油が塗られたり、マッサージ、垢すりにも使われました。

ローマ遺跡のカラカラ浴場

古代中国、古代インド 中医学の始まり、アーユルヴェーダ

2~3世紀頃、中国では薬物について記された本草書を5世紀末に陶弘景によって『神農本草経集注』に再編されました。のちに中医学として確立されていくことになります。

インド、スリランカでは現在も受け継がれている『アーユルヴェーダ』ですが、3,000年以上の歴史があると言われています。

アーユルヴェーダに使われるギムネマ

中世の植物活用 蒸留による抽出法の確立

11世紀、西ローマ帝国亡き後、東ローマ帝国がヨーロッパ各地にイスラム教国から聖地エルサレムを奪還することを訴えたことがきっかけで、のち12世紀に渡りイスラムへ遠征した「十字軍」によりアラビアの文化がヨーロッパとの文化交流が深まりました。

11世紀 アラブ

アロマテラピーでとても重要な、精油を抽出するアラビア式蒸留法が生み出されました。

アラブの哲学者でもあり、医学者のイブン・シーナー(ラテン名:アヴィセンナ)がバラを蒸留することにより、精油とローズウォーターができる事を発見しました。

彼は芳香蒸留水であるローズウォーターを治療に使っています。

彼が著した『医学典範』も17世紀頃までヨーロッパの医科大学の教科書として使われるほどで、ヨーロッパの医学に多大な影響を与えることになりました。

これらの技術が十字軍によって、持ち帰られヨーロッパで広がることになりました。

11世紀~13世紀 中世ヨーロッパ

11世紀、中世ヨーロッパはキリスト教が中心の社会で、「修道院医学」と呼ばれた薬草を使った治療法があります。

のちに十字軍の遠征によりイスラムの知識や学問がヨーロッパに広がり、医学校も開設されることになります。

アラビア語の著書もラテン語に訳されていきました。香りの文化もこの頃、蒸留技術と同時に広く影響を与えることになり、現在のフレグランス文化にもつながっていきます。

また13世紀にはヨーロッパではペストが大流行しました。しかし、香水の工場で働く人だけは病にかかりませんでした。香水の原料となる香料には殺菌消毒の効果があったのです。

また、ハーブやスパイス、樹木、樹脂を燻蒸することで予防したり、香料の入ったポマンダーを首から下げるなどをしてペストから身を守っていました。

14世紀 ハンガリー 若返りの水 治療から香水へ

14世紀頃になると世界最古の香水、若返りの水と言われているアルコールとローズマリーを用いた「ハンガリアン・ウォーター」が作られました。

このハンガリアン・ウォーターを当時ハンガリーの王紀エリザベート1世は、毎日洗顔や入浴に使っていたら、ポーランドの国王からプロポーズされたりするくらい美しくなったと言われています。

ローズマリー 葉と花の先端から精油は作られます

ルネサンス期 

大航海時代による香料の発展

科学技術の発達により頑丈な船が作られ、中国では羅針盤が発明されたりすることにより、航海技術が発達しました。これにより海外進出の機会が増え、ヨーロッパ人による各大陸へ大規模な航海が行われるようになった時代です。

『プラントハンター』呼ばれる人たちにより新しい植物も世界各国からヨーロッパに集められます、また活版印刷の技術も確立し、薬草の知識も広がることにより、香料への関心も大きく高まった時代と言えます。

ユーカリの木 オーストラリア大陸からプラントハンターのジョセフ・バンクスにより本国に紹介される


また、薬用植物の書物も普及するとともに「ハーバリスト」と呼ばれる人たちが活躍するようになりました。

『The Herball』を著したジョン・ジェラード、ジョン・パーキンソン、『The English Physician』を著したニコラス・カイペッパーは薬草と星々の支配を受けるとしています。

香料文化の発展

16世紀頃より、精油の抽出技術が向上して、植物から精油が抽出されるようなりました。

香料の文化はイタリアからフランスの社交界へ伝わり、王侯貴族の間で香料が盛んに使われるようになります。

「オー・デ・コロン」という言葉も、フランス語の「Eau de cologne」(ケルンの水)といわれ、ヨーロッパで流行しました。ベルガモットを中心とした精油とアルコールで作られていました。

皮手袋にも香りをつけたものが流行し、皮手袋製造が盛んな南フランスのグラース地方では、香料の生産にも適した土地で、皮手袋に香料がつけられるようになりました。その後、グラースは香料産業の中心地となり、世界に知られるようになりました。

近代~現代 アロマテラピーの登場

合成香料の誕生

19世紀に入ると、医学と有機化学はさらに進歩していきます。植物から抽出された精油と同じ成分を石油や石炭などから合成できるようになりました。

これにより、石鹸、化粧品、香水、芳香剤などに合成香料は使われるようになりました。

アロマテラピーの誕生

20世紀初頭にフランスの化学者ルネ・モーリス・ガットフォセが研究中に火傷をおった時に近くにあったラベンダーの精油に手を浸した事がきっかけで研究をスタートし、1937年に『Aromatherapie』を著しました。このアロマテラピーという言葉は彼による造語です。

また、フランスの軍医、ジャン・バルネは第二次世界大戦中、負傷者たちに精油から作った薬剤を使いました。

1960年代にフランスのマグリット・モーリーは精油を植物油で希釈し心身の美容と健康に活用する方法を考えました。

先ほどの治療に用いるのとは違い、精神と肉体のバランスを保つために用いられ、のちに著書が英訳され、アロマセラピストというトリートメントオイルでマッサージする方法を確立していきました。

のちにイギリスではホリックアロマテラピーの代表的な存在であるロバート・ティスランドがThe Art of Aromatherapyを発表した事がきっかけでアロマセラピーが大流行し、アロマテラピースクールを開設しました。卒業したアロマセラピストたちによりさらに世に広まっていくことになります。

まとめ 香りは人類の歴史と共に発展してきた知恵の結晶

長くなりましたが、香りは様々な形で人類に関わりながら、人類の歴史と共に発展してきたのがわかりました。

香りの役割は、神へ捧げる神聖なものから、医療、防腐、入浴、マッサージ、殺菌、消毒、芳香、心身の健康、美容と多岐にわたり、私たちの生活に密着した物だというのがわかります。

香りの形も煙、蒸留水、香水、精油と様々です。

先人たちの知恵を上手に活用して、アロマテラピーを楽しみたいですね。

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